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良い状態のでございますが、盤に若干の擦り瑕、CDブックレットに経年の劣化等がございます。
御存知!Music Fidelity Sound Labo社は現在主流のフラットマスタリング方式の先駆者として知られます。
情報量重視ではございますがアナログ盤的な音質を指向しており、(古いものとは言え)非常に良心的なものとなっております。
現行でオリジナル・マスターテープからのリマスターはこのMFSL社盤のみ。オーディオ・ファンに定評のあるSteve Hoffmanがリマスターを担当致している模様でございます。
また制作当時今作マスターテープの貸し出等での立ち合いや技術的な興味(笑)からでしょうか?かのTom Scholz自身が関与している事がミソでございます。
後にTom Scholz自身が大傑作”Boston””Don"t Look Back”のリマスターを手掛けますが、ここでのリマスターの有り方を参考にしていた感がございます。
CDブックレットには(若干ではございますが...........)貴重なライヴ写真が掲載されております。
内容は言わずもがな。
ラインナップは元来の名手二名のみ。
Tom Scholz(G、Key、B、Ds、Per)、Brad Delp(vo)となります。
またゲストとしてJim Masdea(Ds、Per、かなりの楽曲でDs担当の模様)、Gary Pihl(G、一曲のみ参加)、
また制作初期段階で関わっていたSib Hashian(Ds、全盛期Bostonの元メンバー)の録音が一部で使用されている模様。
制作はTom Scholz、1980~1986年御馴染み”Hideaway Studio”での録音制作となります。
マサチューセッツ工科大学卒業後にかのポラロイドの研究チームで働いていたTom Scholzがそこで得た収入でかの”Hideaway Studio”を建設。
在学中に知り合ったBrad Delp、Barry Goudreau、Jim Masteaと共にデモ録音を制作した事から始まるバンドでございます。
されど当時レコード会社からの反応はなく、前身バンドは消滅。Tom Scholzは音楽性を変化させていきます。
音楽性を固めその後Tom Scholzは再びBrad Delp、Jim Masdeaと共に再度デモ録音を制作。レコード会社の反応を窺う事となります。
録音の良さも加わり、反応は上々。大手の”Epic”が契約に乗り出す事となります。
”Epic”はデビュー作制作にかのJohn Boylanを起用するもののTom Scholzは難色を示し、自身での制作を主張。
また”Boston”というバンド名を冠しているものの実質はTom ScholzのみでBrad Delp/Jim Masdeaがデモ制作に参加というもの。
Jim Masdeaは既に離脱。ツアーが出来るバンドとしての体裁を整える為にBrad Delp人脈から以前も関わっていたBarry Goudreau、Sib Harshian、Fran Sheehanを引き入れる事となります。
制作が始まるものの実態はTom Scholzは自身のみで制作を進行(一曲のみJim Masdea起用)。
その後他の録音スタジオに移行しJohn Boylanを中心に他のメンバーのオーヴァーダビングやヴォーカル録音及びミキシングを行う、という異例の制作を行う事となります。
摺った揉んだの制作の末に完成。
リリースに漕ぎ着ければ大反響。また独特とは言えど録音の良さも加わってオーディオ・ファンの大反響も加わり、驚愕のセールスを記録する事となります。
ツアー後はレコード会社の催促・強制があり次作の制作に乗り出す事となりますが、今度は完全にTom Scholz主導の制作。
Tom Scholzの演奏制作にBrad Delpのヴォーカル、他のメンバーの部分オーヴァーダビングという形で再び制作を進めるものの「一曲追加制作の段階」でレコード会社が制作を強制的に終了させ、リリースを強行。
Tom Scholzやバンドは忸怩たる思いをする事となります。
されどリリース後は再び大反響。ツアーも長期化、会場も大規模化し大成功を収める事となります。
ツアー後Tom Scholzは契約面で相当な不信感に陥り、新作に向け創作を開始するものの現行のビジネス体制を断ち切る事に動き出す事となります。
マネージャーとの法廷闘争や録音契約に関する不当さを解消する為に契約解除を見越してバンド活動は沈黙(制作は継続)。
その後Barry Goudreauは自身のソロ作”Orion the Hunter”を制作し、更にその名を冠した自身のバンドを結成。他のメンバーもそれぞれの活動へ移行し、バンド体制は解体となります。
またレコード会社は契約不履行(6年で10作リリースは異様な契約とは思われますが.......)を訴え、法廷闘争は泥沼化。
Tom Scholzは忸怩たる思いをしつつも自身の企業”Scholz Research & Development Inc”を設立。
かの”Rockman”を産み出す事となります。
泥沼化したレコード会社との法廷闘争では印税面での圧力を受けるものの一審でTom Scholzが勝訴(あの契約ではねえ.......その後はレコード会社が不当を訴え更に長期化。
1990年4月に再びTom Scholzが勝訴という結末に)。
新規に”MCA”との契約を締結し、Brad Delp/Jim Masdea(一部Sib Harshian)の協力を得て制作を進めていた新作を完成させ、
8年越しにリリース..................という非常に面倒な経緯がございます.................................
さて今作。
前作から八年の歳月というもの。
時代は変わり当時は米国を中心としたHR/HMブーム後期と言う時期。非常に話題になった作品でございます。
相も変わらずの音楽性と音造りとは言われましたが、メロディアス/メロウ重視の音楽性がミソ。
制作当初(1979年)の米国では(日本で言う)”A.O.R.”ブームの真っ只中で、メロウな感覚のメロディアスさが以て囃された時期。
それが反映された感がございます。
但し、かの英国名バンドWishbone Ash系統のメロディアスで流暢なツイン・リード・ギターは健在、がミソでございます。
その後の法廷闘争のトラブルでTom Scholzが世の音楽の流行とは疎遠となった感があり、浦島太郎的な感がある音楽性でもございます。
そもそも”Boston”がTom Scholz自身という感がありそこに特徴的な表現力を持つヴォーカリストBrad Delpが絡むという感があり、本来の姿が露呈した感がございます。
但し、大傑作と名高い”Boston””Don"t Look Back”に比べ、アメリカン・ハード系バンドの躍動感や高揚感が薄れている事がミソ。
非常に質は高いもので今作は「嘗てと変わらない音楽性に音」とは言われましたが、このギャップがセールス等のギャップに繋がった感がございます。
リリース当時某米国HR/HM系ミュージシャンにも「A.O.R.的なもの」と評されており、元来HR/HMファンの支持が篤い筈の”Boston”がそう扱われておりました。
当時はかの”Thrush Metal”の台頭そしてグランジ/オルタナの息吹が聞こえ、八十年代的な音楽性に陰りと嫌気が見えるという時期。
そこに(七十年代後期とは言え)この音楽性を以て再び登場した”Boston”。
1000万枚、800万枚云々と売り上げた以前に比べ、半減。当時の米国を中心としたHR/HMブームとは言えどこの微妙な評価がその後のバンドの姿を窺える感がございます。
かの法廷闘争等々のトラブルが早期に解決し新作制作に臨んでいたなら................当時のHR/HMブームに上手くリンクしていたなら..............とも思わせる作品ではございます................
今作リリース当時は嘗て同じく「ハード/プログレッシヴ」扱いであった名バンド”Journey”や”Styx”は既に事実上の解散。
”Kansas”は名手Steve Morse(現Dixie Dregs/Deep Purple/Steve Morse Band)を迎えて名作を制作するものの新生第二弾”In the Spirit of Things”がセールス不振。
時代の流れを感じされるものではございました............................
Journeyの大傑作と呼ばれた”Escape””Frontiers”がそれぞれ1000万枚の売り上げに対して、事実上のSteve Perryのソロ・プロジェクトと化した”Raised on Radio”が(質は高いものの熱心なファンにそっぽを向かれ)300万枚。
似た経緯が窺える感がございます....................................
現在では入手が困難。この機会に是非。
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